人生一度きりなので、ひとつの会社に縛られず、
実力を試してみたい、若いうちに働けるだけ働いておきたい、
もうちょっと稼ぎに余裕が欲しい
そういった理由から独立開業を目指す方も少なくありません。
それに、最近では副業の種類も増え、フリーランスという
働き方も認知されてきています。
パソコン1台で自宅で仕事が完結するということも多く
リスクが少なく、個人事業主として
仕事がしやすくなってきました。
一方で、急に個人事業主になるといっても、
場所は大きなハードルとなります。
独立する予定が無いころに今の住まいなどを決めていない人、
とくに賃貸のマンションやアパートの一室で開業を考えている人は
開業届を出して良いかなと悩むこともあると思います。
そこで、自宅でも開業する際の注意点や
家族や管理会社、税務署等に指摘されずに開業する方法についても紹介します。
個人で開業するメリット
あらためて個人が自宅で開業するメリットはいくつもありますが、
ここでは3つ取り上げます。
1.家賃、光熱費、通信費の一部が経費として計上できる
自宅で仕事(作業)をすることで、全額とはいきませんが、
家賃などの一部を経費にすることで、所得税などのの額面にも影響があります。
2.仕事で使う道具や、情報収集のための本やセミナー参加費なども
経費として取扱いできる。
開業せずに、自分で買い物するだけではただの出費、消費ですが、
仕事に関係することであれば色んなものが必要経費となります。
また、業種やモノによっては補助金の対象になるものもあり、
事業主しか申請できない制度も活用することができるようになります。
3.仕事をしているとみなされる
おかしな表現に聞こえるかもしれませんが、
例えば、ずっと同棲状態のいわゆる事実婚を例にしてみると
分かりやすいかもしれません。
正式に婚姻届を出していることで、使える制度が変わってきますし、
いろんな事の証明が必要になったときに手間が少なくすみます。
同じように、開業届を出していれば、たとえば子供ができて
保育園に預けたいというときにも、
ただ、自宅で仕事をしていますと言っても認めてもらいにくいですが、
開業届のコピーを提出すれば、そういった手続きもスムーズに通ります。
家族や職場にバレないか心配
開業のメリットは分かっているし、気持ちもある。
それに、特に来店型ではなく、パソコンで完結するから
看板や表札をあげるつもりもないけど、郵便物などでバレたらどうしよう。
賃貸の場合だと、事業用として使用すると、
家賃が上げられたりしないかなと言った心配もあるかもしれません。
それなのに、ネットで通販事業や、せどりなどEC事業をする場合には、
通信販売は特定商取引法の対象なので「特定商取引法に基づく表記」として
住所をネットショップに掲載する必要があります。
しかも、ショップの住所をホームページの隅っこに載せるだけでなく、
何か商品を送ろうとした時には、受取人には住所を伏せられる
メルカリなどとは違い、自身の住所も記載しないといけません。
いくら、ちゃんとした商品を扱っているとはいえ、
どんな人がお客様になるか分かりません。
ふとしたことがきっかけでクレームになり、
SNSなどでショップの悪評をあげられてしまっては、
誰でも住所を調べられるため、
不必要な訪問や個人情報の漏洩などのトラブルが起きて
家族を巻き込んでしまう恐れがあるでしょう。
私も全く知識が無かった頃、ドロップシッピングを
していたことがあります。
主にアメリカAmazonから自宅に仕入れて販売するという
方法ですが
毎回エンドユーザーに商品を送る際には、住所を書くのが
本当に嫌で、配送状を記入するたびに、
変なお客様じゃありませんようにと
祈りながらしていたのを思い出します。
また、送ってからも到着してから2週間くらいは、
返品などで送り返されてきたり、
心無い手紙が届いたりしないか心配でした。
しかも、お客様が増えれば増えるほど、心配が倍増していったので
個人で開業する場合、特に物販などする場合には、
精神衛生上も住所をそのまま書くのをおすすめしません。
そこで、個人で開業したいけど住所を特定される
リスクを避けたいというフリーランスの方には
バーチャルオフィスがおすすめです。
バーチャルオフィスやレンタルオフィスとは?
聞きなれない言葉かもしれませんが、
レンタルオフィスは、言葉のとおり賃貸で事務所を借りることと、
シェアハウスの中間というとイメージがわきやすいかもしれません。
レンタルオフィスでは、自分専用の作業スペースや机、椅子、ネット回線、
コピー機などの設備がそろっていて、
共有の会議室を利用できたり、共用スペースで来客対応ができたりします。
また、場所によってはロッカーや図書コーナー、シャワーブースなど独自の
サービスを備えたレンタルオフィスもあります。
ただし、どうしても東京、大阪、名古屋、横浜、福岡といった都市部では
数も充実していますが、地域によっては選択肢が少ないといったデメリットがあります。
一方、バーチャルオフィスとは、物理的なオフィスはなく、
一番シンプルなものだと、
住所だけ借りることができます。
借りるというと伝わりづらいかもしれませんが、
割り当てられた住所を、
あなたの会社の住所として使用して良いですよ
ということです。
バーチャルオフィスの住所で開業することは
商業登記法でも問題がないですし、
また、ネットショップ運営等で住所の公開が定めれている
特定商取引法の表記においても、バーチャルオフィスの住所を
利用することが認められています。
サービス提供会社によっては郵便物についても受け取り可能で
電話も転送サービスがついているところもあります。
個人事業の開業等届出書を書く時の住所は?
開業届出書には、住所地・居所地・事業所等としての
納税地と、それ以外の住所を書く欄があります。
バーチャルオフィスで届け出を出す場合の、前提としては
実際に住んでいる今の住所とバーチャルオフィスの
住所2か所とも記載しておくことがおすすめです。
理由としては、まず開業届書に記載した住所はどこかに
公開されたりすることがないという大前提がクリアされていることと
記載しなかった部屋等の利用料金や
家賃が経費として計上できない可能性があるということです。
居住地と納税地のどちらにバーチャルオフィスの住所を書くかは決まりは
ありませんが、
「納税地以外の住所地・事業所」にバーチャルオフィスの住所を
記載されている方が多いようです。
理由としては、開業したての時はあまり意識しないかもしれませんが、
税務調査は原則的に納税地にて行われるため、
普段仕事をしている場所を納税地とした方が
仮に税務調査が入った場合にも、対応をスムーズに進めやすくなります。
反対に税務署からの郵送物をバーチャルオフィスで受け取りたい場合や、
税務署から指示があった場合には、「納税地」に
バーチャルオフィスの住所を記載されている方もいます。
申請した場所で、納税地が確定します。
バーチャルオフィスを納税地にすることで、税務署からの書類は
バーチャルオフィスに届き、自宅には届きません。
そうすることで、自宅に届く郵便物と別れることでプライベートと
混同しにくいメリットがあります。
また、賃貸物件で賃貸借契約書に「住居用」と記載がある場合、
住居を事業用に使用することはできないので、
納税地をバーチャルオフィスの住所にすると良いでしょう。
以上のことを踏まえると、バーチャルオフィスの住所を
普段仕事をする(住んでいるところ)と同じ税務署の管轄の地域で
選択するとスムーズなことが多いです。
個人事業にバーチャルオフィスがおすすめな理由
まず一番のメリットは何と言っても
個人の住所が特定されないということです。
不特定多数の人が目にするホームページ上に
住所を載せることに抵抗がある人も多いはず。
バーチャルオフィスであれば、合法的に自宅以外の住所を
業務用に使用することができます。
また、いわゆる大都市以外にお住まいの方は、
「部屋番号まで書いて個人でやっているのがバレバレ」
「田舎の住所だとダサい」
「信用のない会社と思われそう」などと
住所ひとつで悩みが尽きません。
また、名刺やホームページ、チラシなどを作成する時にも、
住所や電話番号が“いかにも”個人のもの
というよりも、“ちゃんとした”住所のほうが
見栄えがするというのは、
客観的に考えてもメリットがあるのではないでしょうか。
また、今はとりあぜず賃貸だけど、事業が軌道にのったら
もっと新しくて広いところに引っ越ししたいという場合でも、
バーチャルオフィスを契約していれば、
公開していた住所もそのまま使えるので
郵便物の受け取りや役所への変更届も
最小限の労力で済ませることができます。
なので、ずっと今のところに住むか分からない、
だから引っ越ししてから開業する方が良いのかな
などと迷っている方にも、
早く事業を始められた方が顧客もつきやすいので、
バーチャルオフィスの住所で開業という方法も
選択肢としておすすめです。
バーチャルオフィスに向いている業種と開業できない業種
バーチャルオフィスに向いている業種は、
やはりEC事業などの通販事業や、ネットショップ関連
(Amazon、楽天、ヤフオク、自社サイト他)です。
また、SNSを使った副業、パソコンがあれば自宅でも
作業ができるフリーランスの翻訳者や、システムエンジニア、
WEBデザイナー、WEBライター、ネット広告代理店などです。
とくに、雑貨販売、服飾販売などのネットショップや
個人での輸入代行業などは、
配送元や返品先などで住所を記載しないといけないため
個人の住所を出さずに事業ができることは、大きなメリットです。
反対にバーチャルオフィスの住所では、
登録上違法になる可能性がある業種としては、
人材派遣などの職業紹介業
税理士・司法書士・弁護士等の士業と呼ばれる業種
(公認会計士は開業できたという事例もあるようです)
他にも、建設業や廃棄物処理業、探偵業、古物商、不動産業は
バーチャルオフィスの開業は難しいと言われています。
上記は法律上ダメなケースですが、
向いていない職種としては、業種を問わずに
平たく言うと「看板があったほうが良い」店舗です。
シンプルに自分がお客さんの立場になって考えてみると
分かりやすいと思います。
たとえばセラピストや占い、カウンセラーなどは
設備も少なく開業しやすいため、
自宅サロンなどを検討する方も少なくないですが、
お客さんに“来店”してもらう場合は、
やはり、いくら自宅であっても看板や表札が
あった方が安心できます。
ただ、セラピスト業でも出張タイプで
名刺に記載する住所が欲しい場合や、
占いでもWEB鑑定などいくらでも
バーチャルオフィスの形態で始めることはできます。
また、来店型にすると、不特定多数の人が出入りすることで、
セキュリティ上の問題があったり、
傷などが増えやすいため、とくに賃貸の場合は管理会社は
嫌がります。
一方で、来客もなくパソコンで自宅で作業が完結できるのであれば、
サラリーマンがリモートワークしているのと変わらないので、
周辺住民とトラブルになることも少ないでしょう。
補足ですが、開業すると屋号で銀行口座があったほうが、
お金の管理がしやすいことも多いです。
その場合、銀行によっても基準などは違ってきますが、
事業計画書やバーチャルオフィスとの契約書
ホームページなども用意しておくと
バーチャルオフィスの住所でも銀行口座の開設もできます。
バーチャルオフィスのメリットと注意点
バーチャルオフィスの種類は増えてきており、
月々1,000円以下で利用できるバーチャルオフィスもあります。
ただしその場合、都心部の住所が多いです。
地方の住所だと3,000円~1万円くらいが一般的ですが、
郵便の転送に時間がかかったりするので、
よっぽど、こだわりの住所がなければ
自宅から遠すぎないところを選ぶのが良いです。
実態のないものにお金をかけるのに抵抗がある
人もいるかもしれませんが、
事業を始めるにあたって、光熱費程度の金額で
自宅バレなどのリスクも回避できるのであれば、メリットですし、
必要経費として計上できるので、資金を少なく開業したい
個人にとってはぴったりです。
また居住用の賃貸に住んでいる場合に、開業しようとする際は、
一度、管理会社に相談してみたほうが、トラブル回避になります。
理由としては、事業用と居住用では、税金の兼ね合いや
保証内容、解約時の規約に差があるからです。
そのため居住用の賃貸を事業用として切り替えすることは
むずかしいです。
ただ、まだ副業レベルで来客も無いといった場合には、
兼用という形で認めてくれる事もあります。
また、実際には開業届自体は紙切れ1枚で出来るものなので
相談なくともすることができます。
開業した後で、思ったよりも上手くいかなかった場合や
自宅での開業について指摘があった場合に、
いい加減に聞こえてしまうかもしれませんが、
売り上げが年間20万円も無かった場合などには
実態が伴わなかったということで、廃業届を出せば良いのです。
所得隠しは絶対にダメですが、開業届や廃業届には手続きに
お金がかかるものではありません。
最後に、お伝えしたかったのは、せっかく開業を考えているのに、
賃貸だからとか、家族にバレたくないかといったことで
あきらめてしまうことは、もったいないことです。
家族にバレたくないという人も、気持ちを整理していくと、
失敗したときの心配をかけたくない、
もしくは、自分でこれから帳簿の作成や発注書、納品書等の管理
確定申告など出来るかなといった不安が二の足を踏ませていることと
思います。
ただ、開業のときに全部わかっていることは不可能です。
悩みが出てきたときに、調べて1つずつ解決していけば良いのです。
そうすれば、今回のように、個人が自宅でも賃貸でも開業届を出して、
個人事業主として始める方法があることが分かります。
だから、開業がバレるバレないそんな次元の悩みではなく、
どういう店舗コンセプトにしたいとか、
どういう仕事の仕方をしたいのか、
3年後どうなっていたいのか、
そういったことに目を向けるようにしましょう。
そうすれば、着実に去年の自分よりも、昨日の自分よりも
成長した自分になれますよ。
たとえ、会社などに知られたとしても、
説得できるだけの思いや実績を出してしまえば良いのです。
安定的に月100万円以上稼げるようになって、
「会社クビになったらどうするの」なんて怒る家族も
きっと少ないと思います。